【イベントレポート】人事採用におけるトレンドの変化と効率化~話題のスタートアップからみた人材課題の現実とは~(2019年12月18日開催)

会場:Knowledge Place(ナレッジプラス)
開催日時: 2019年12月18日(水) 19:00~21:00
登壇者:
株式会社grooves 取締役 田中 祐輔 氏
株式会社ミツカリ 代表取締役 総合企画室 表 孝憲 氏
株式会社ペイミー 執行役員 事業推進部長 仲川 英歩 氏

人材不足・企業と人のミスマッチ…。スタートアップ事業者が語る、人事課題の現実と解決策とは?

2019年12月18日、京セラドキュメントソリューションズ社が運営する「ナレッジプラス」で、セミナーイベント「トレンドの変化と効率化〜話題のスタートアップから見た人材課題の現実とは〜」が開催されました。登壇したのは、株式会社grooves取締役の田中祐輔さん、株式会社ミツカリ代表取締役の表孝憲さん、株式会社ペイミー執行役員・事業推進部長の仲川英歩さん。

スタートアップ企業の課題1位とも言われる人材確保について、それぞれの切り口で企業と人材のマッチングをサポートする3人が、より良いマッチングを叶えるサービスと、人材確保のポイントを語りました。

伸びるべき企業に優秀な人材を

最初に登壇したのは、「働くヒトの未来を創る『ワークシフトインフラ』の構築」をビジョンに掲げる、株式会社grooves取締役の田中祐輔さん。田中さんは、地銀とタッグを組んで展開する採用支援サービス「Crowd Agent」と、ITスタートアップにフォーカスした「Forkwell」という2つのプロダクトを紹介しました。

1つ目の「Crowd Agent」は、中小の転職エージェントをネットワーク化し、採用候補者の母集団形成を実現するプラットフォーム。Crowd Agent に求人を登録すれば、優秀な人材を抱える全国2,500人の転職エージェントが人材をサーチし、最適と思われる人を紹介します。1社と契約するだけで2,500人によるサーチが行われる利便性と、拠点以外の幅広い地域でサーチできるのが大きな特徴。ニッチな業種や少数採用、地方求人など、大手エージェントがあまり取り組まない領域を得意としているそうです。

同社は、人口減少と東京一極集中が見込まれる将来に向け、日本各地で雇用を生み出すために全国の地銀と連携し「地域創生ネットワーク」を構築。このネットワークが、全国でのマッチングを可能にしています。

2つ目の「Forkwell」はITエンジニアの採用支援プロダクトです。プロフィールを登録したITエンジニアが、Web系企業や自社サービスを開発する企業からスカウトを受けられるのが特徴。マレーシアにも拠点があり、海外の優秀なエンジニアとのマッチングも可能としています。

田中さんによると、日本のIT人材は、2030年には需要に対し40万人が不足する見通しなのだとか。「この課題解決のためにも、優秀な人材が、伸びるべき企業に行けるようサポートしていきたいですね」と話しました。

風土にマッチする人を可視化する適性診断

続いて登壇したのは、「人と企業のミスマッチをなくし、仕事で不幸に感じている人をなくす」ことを目指す株式会社ミツカリ代表取締役の表孝憲さん。「面接時は活躍すると思ったのに、入社後まったくワークしない」というミスマッチを解決するプロダクトとして「ミツカリ」を紹介しました。

「ミツカリ」は、求職者だけではなく、企業サイドの社長・スタッフにも受けてもらう適性検査。これにより、たとえば銀行の営業担当の求人でも、「営業職には向いていたが、うちの会社の社風には合わなかった」というミスマッチが防げます。また、「社長には合わないけれど、活躍しているメンバーとは合う」といった個人間のマッチングも可視化。全72問のテストはスマートフォンで受けられ、約10分ほどで終わるそうです。

適性検査の成果についてもヒアリングを重ねていて、たとえば従業員数500人の運送会社では、導入から1年間で、全体の離職率が18%から5%に、新卒採用では15%から0%にまで下がったのだとか。現在の登録企業は2600社以上、テスト受検者数は14万人にのぼります。

この適性検査で集まった性格データは、採用後の配属先決定やマネジメントの仕方などにも生かせるのだとか。個々のカルチャーや個性を可視化することで、離職の主な原因としてあげられる、「人間関係」「社風・風土が合わない」といったミスマッチを防いでいます。

「今後は、集まった適性+職種データを活用し、業種ごとで活躍する人材の傾向といった分析も進めていきたいと思います」と話しました。

働くヒトの不安を解消する給料前払いサービス

3人目の登壇者は、給料前払いサービス「Payme」を展開する、株式会社ペイミー執行役員・事業推進部長の仲川英歩さん。「Payme」のサービス内容とその効果について語りました。

「Payme」は勤怠システムと連携し、従業員が働いた分の給料を自動的に計算。企業が導入すれば、従業員はメールアドレスとパスワードを登録・入力するだけでログインでき、給料内の金額であれば、いつでも口座振り込みを申請できます。運用・導入コストは0円。申請された給料は即日支払われます。

仲川さんは、導入による企業サイドのメリットを2つ解説。1つ目は、アルバイト求人メディアに「日払い」タグを付けることで応募数が約3.7倍増加すること。

2つ目は、従業員定着率の向上です。仲川さんによると、アルバイト入社では全体の約2割が1ヶ月以内に辞めていて、主な理由は「職場環境に馴染めない」「給料までが長い」などだとか。「Payme」を導入すれば、可視化された給料がモチベーションにつながったり、「いつでも給料を受け取れる」という安心感が生まれるので、結果的に定着率が約2倍向上するそうです。

サービス開始から約2年で、全国300社以上が導入し、12万人以上が利用。利用率は1企業あたり10〜30%で、月に3〜5万円程度の利用が多いそうです。導入企業は、飲食、小売、人材派遣といった非正規雇用を多く抱える企業が中心ですが、上場企業で導入しているところも複数社あります。

仲川さんによると、日本の単身世帯の2人に1人が貯金ゼロなのだとか。そうした背景から、給料前払いサービスへの注目が高まっているようです。

「給料は社会人にとって一番身近なお金であり、企業と従業員を結ぶ大切なコミュニケーションツールの一つ。しかし、その支払われ方は50年間変わっていません。給料の受け取り方を自由にし、資金の偏りによる機会損失のない世界を作っていきたいですね」。

「カルチャーフィット」を大切に

最後は登壇者3人によるトークセッションが行われました。参加者からの質問に答えながら、人事課題解決へのヒントを得る時間となりました。

まず「スタートアップにおける採用で気をつけていることは」という質問に対して、田中さんは「僕は三次面接など後半から登場します。それまでに、必要な項目は掘り下げられているはずなので、僕自身は雑談のような話しかしません。自然体で話し、合うかどうかを考えます」と回答。表さんは「うちはワンプロダクトでやっている会社なので、採用を目的にせず、任せたいことにマッチするかどうかを確認します」と答えました。仲川さんは「スキルよりもカルチャーフィット。サービスへの理解度や、社長の想いへの共感度が高い人材が結果的にいまも活躍しています」とコメントしました。

「HR業界が抱える課題と、それに対する展望は?」という質問には、「データに対するリテラシーの底上げが必要だと感じています」と表さん。仲川さんは「仕事に必ず関わる給料を自由にしていきたい。そこから広がる事業展開を見据えて、資金の隔たりによる機会損失のない世界を作っていきたいです」と答えました。田中さんは「東京にも地方にも、いい事業をしている人がたくさんいます。そうした事業者さんは、事業を広く知らせる術を真剣に考えてほしいし、それを助けるのが我々のようなHRサービスだと思っています。そこの歯車がうまく噛み合えば、いい事業者さんにいい人が集まって、日本全体がいい方向に向くと思う。そういうところを一緒にやっていけたらいいですね」とコメントしました。


適材適所でのベストなマッチングが叶えば、企業も人も幸せになれます。人事課題の解決には、「採用」のその先を見据える視点が求められそうです。