【イベントレポート】中小企業こそリファラル採用を -これから始める失敗しない運用方法と成功事例-(2019年11月22日開催)

会場:Knowledge Place(ナレッジプラス)
開催日時:2019年11月22 日(金) 16:00~18:50
登壇者:
リファラルリクルーティング株式会社 代表取締役社長 白潟 敏朗 氏
ウォンテッドリー株式会社 Recruitment Marketing Evangelist / Business Hiring Manager 小池 弾 氏

これからの採用手法は「リファラル採用」~紹介から得られる新たな企業価値

2019年11月22日、Knowledge Placeでセミナーイベント「中小企業こそリファラル採用を ―これから始める失敗しない運用方法と成功事例―」が開催されました。登壇者は、リファラルリクルーティング株式会社 代表取締役社長の白潟敏朗さん、ウォンテッドリー株式会社 Recruitment Marketing Evangelist / Business Hiring Managerの小池弾さんです。

リファラル採用とは、自社社員による人材の紹介や推薦によって選考を進める手法のことです。今回のイベントでは、その採用手法の運用方法や、選考プロセスでのコツ、成功事例が紹介されました。

リファラル採用を成功させる、3つの条件

最初に登壇したのは、リファラルマーケティング株式会社の代表を務める白潟さん。同社はリファラル採用の専門企業として、コンサルティングや研修などを行っています。

まず白潟さんは、昨今の採用状況の動向について説明。2015年から2025年にかけて、労働者が600万人ほど減ると推定されていることを例に出し、「これからは、『採用は難しい』という現状が当たり前のものになります。きちんとした採用のスキルを身につけておかないと、人手不足で会社自体が潰れてしまう恐れがあります」と指摘しました。

従来の採用手法は、主に人事部が手動でコストをかけて行うことが大多数でした。しかしリファラル採用はコストを抑えられるため、「浮いたお金で、新規事業の開発などに回すことができる」ことがメリットだと白潟さん。そして、リファラル採用を成功させるポイントとして、3つの条件を挙げました。

1つ目は、企業の中に社長と会社を好きな社員が在籍していること。「そもそも会社や社長のことを好んでいない社員は、リファラル採用にも協力的でないため、そうではない社員がリファラル採用を行うことで、その企業に合った求職者を採用することができる」と言います。

2つ目は、選考に訪れた求職者に嘘をつかないこと。「入社前と入社後のギャップを埋めることが大切。悪い意味でイメージの差異が生じてしまうと、辞職になりかねない」と白潟さんは話します。そのためには、社員の平均年収が低い、離職率が高い、というような会社の課題をあらかじめ伝えておくことが大事とのことです。

その上でさらに大事なのが、3つ目の条件です。それは、課題解決の方法を同時に提示しておくことだと白潟さんは話します。「例えば離職率が高ければ、それを10年で15%にする、などと伝えます。社長や人事担当と中期経営計画を見せておくことが効果的。その上で、一緒に課題を解決していきましょう、と未来を見せれば、ネガティブな課題を見せることのリスクも減少します」。

白潟さんは、リファラル採用を取り入れることで、会社の課題と魅力を見える化できるのも会社側にとってのメリットと言及。それらを「アピールブック」にまとめておけば、より効果的に求職者への理解を促せると話しました。

ウォンテッドリーが仕掛ける、自社認知への動線

次に登壇したのは、ウォンテッドリー株式会社の小池さん。『シゴトでココロオドルひとをふやす』ことをミッションに、働くすべての人が共感を通じて「であい」「つながり」「つながりを深める」ためのビジネスSNS「Wantedly」を提供しています。小池さんは普段ビジネスチームの人事として働きながら、エバンジェリストとしてマーケティング視点の採用「リクルートメント・マーケティング」に関する啓蒙を行なっています。冒頭では、「これからの採用では、ミレニアル世代の人々をメインに据えていくと効率的だ」と話しました。ミレニアル世代とは、2000年以降に社会人になった人々のこと。2025年、世界の労働者に占める彼らの割合が75%になる推計が出されているそうです。

彼らの行動について抑えるべき重要なポイントは、2つ。

1つは「情報収集」で、スマートデバイスの普及により、インターネットへのアクセスが当たり前になることで、日常の中での情報を受け取る総量が数年で一気に増加したことが特徴だと言います。

2つ目は、「転職活動に関する意識変化」で、ミレニアル世代は将来的な転職を意識している人が多く、転職活動をしていない時期でも将来のキャリアを考える機会には前向きな意識を持っていると各社のサーベイから読み解かれています。

つまり、彼らは日々の中で将来的な転職を意識しつつ、日常の過多な情報に接しているとのこと。そこで重要になるのは、「転職に関する情報を、転職を意識する前のタイミングで与え、あらかじめ企業への興味を引かせることだ」と話します。

実際にウォンテッドリーは、採用に関する事業として、企業理念や文化をアピールする募集記事のリリース、求職者が低いハードルで企業に訪れることができる「ミートアップ」というイベント機能も提供しています。それらを通して意識しているのは、「いかに選考前のプロセスを構造化するか」ということだ、と話します。

「つまり、長期的なプロセスで発信する情報を設計していくことが重要。まずは伝えるべきコンセプトを決定した上で、事業、業務、人、文化、制度、といった企業に関する情報を発信することが大切です」と小池さん。フレームを決めておくことで情報の整合性も取れ、長期的に発信に対応でき、統一されたメッセージを作ることができると言います。

小池さんは、ウォンテッドリーで行っている採用活動の「3つのポイント」を披露。
1つ目は、人事だけでなく、社員全体を巻き込むこと。
2つ目は、施策の目的を明確にし、目的に即したコンテンツを作ること。
3つ目は、短期の指標に囚われ過ぎず継続することだと話します。

「まだウォンテッドリーを知らない人に対しては、採用色の薄いコンテンツを通して〝興味への動線〟を引く必要があります。その際は、企業に興味がなくても読み物として面白く、ターゲットのニーズに即したコンテンツを挙げていくことが重要。」

ウォンテッドリーでは、今後注力するべき採用ターゲットについて調査を実施。内定をもらいそのまま入社した人や、逆に辞退した人を対象にアンケートを行いました。その結果、辞退した多くの人は、企業の独自性を理解できていなかった反面、文化やビジョンについては理解していたことが判明した、と言います。

この結果を受け、ウォンテッドリーは、同社への認知への動機を作る対策を発案。事業に関連する分野のノウハウをコンテンツ発信したり、ワークショップを実施したりといったアイデアを挙げました。

ほかにも、社内ツアーや実際の業務参加など、ウォンテッドリーを認知した後のニーズに応えられる企画で、企業を体験する機会を生み出していきたいと話しました。

リファラル採用への理解を深める

最後に、白潟さんと小池さんによるトークセッションが行われました。参加者による質問への答えを通じて、リファラル採用の運用への理解をさらに深めるものでした。

「現在は東京を中心に注目されているリファラル採用が、今後地方展開される可能性はあるのか」という質問に対して、白潟さんは「すでに大阪、福岡、岐阜、北海道などでは成功している事例がある」と回答。これに対し、小池さんは「やはりリファラルのターゲットの母数は、地方では少なくなってしまう。地上戦だけでリファラルを活用しようと思っても、接点を直接持てるタイミングが年に数回の帰省の際などに限られる」と話しました。その上で「地方の企業こそ、オンライン上のつながりを活用できるSNSでの発信がカギ。例えばインタビュー記事を出すことで、取材された社員、社員の友人/知人がそれをシェアします。そうすることで、普段直接会えない人たちにもオンライン上で『こんな仕事をしているんだ』と認識され、それが応募や紹介のフックになる」とも語りました。

白潟氏は、共感性から採用につなげるウォンテッドリーの事業とリファラル採用の関連性について言及。「僕の会社では、ウォンテッドリーも採用に活用させていただいていますが、そこで採用した社員からの紹介でリファラル採用を行うと、とても効果的です」と話しました。

「10名ほどの小さい会社で、自社の人や文化を見せたいものの大規模なイベントをするスペースがない場合、どのように会社をアピールすればよいか」という質問に対しては、小池さんが「目的に応じて打ち手は変わってきます。」と前置きした上で「まず、自社に一定興味のある潜在層のターゲットに対しては、社員や会社の雰囲気を感じ取ってもらうカジュアルなMeetupを行うなどして企業内のリアルを見せていく。一方、まだ自社への興味が浅い人々に対しては、他社とタイアップのイベントを企画するなど、自社の魅力以外でのフックを考えることが戦略の1つになるのではないか」と答えました。


今後労働人口が減る中で、注目すべきリファラル採用。社内の魅力をアップデートする突破口になるかも知れません。