【イベントレポート】変わる健保業務 ペーパーレス技術とその効果(2019年10月28日開催)

会場:Knowledge Place(ナレッジプラス)
開催日時:2019年10月28日 14:00-16:30
第1部登壇者:京セラドキュメントソリューションズ株式会社健康保険組合 山田常務理事
第2部登壇者:京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社 深井さん
第3部登壇者:AI inside株式会社 事業開発本部 アライアンス推進部 藤崎 泰幹様

「健保業務のペーパーレス化」をテーマにセミナーを開催しました。3部構成で、第1部は京セラドキュメントソリューションズグループ(以下KDC-G)における電子申請システム導入事例のご紹介、第2部は電子申請システムのデモ、第3部はAIを活用した手書き文字認識システムのご紹介がそれぞれ行われました。

冒頭、主催者代表より挨拶があり、健保業界の人手不足の現状や既存従業員の業務負担等の課題提起のあと、今回紹介するECMというキーワードに触れ「ITを活用し、非効率な紙業務を見直しませんか」との提言がありました。

ECMとは?

ECM(Enterprise Content Management:エンタープライズコンテンツ管理)とは、企業などで業務上取り扱う文書ファイルや画像・動画・音声などのメディアコンテンツなどを一括で管理する方式や、そのためのシステムのこと。膨大な情報を長期保管が可能で、管理情報へのアクセスも容易、さらに管理権限の設定もできるため、セキュリティーを向上しながら可用性も確保し、情報の価値を高めることが可能です。

健康保険組合 適用・給付業務の電子化とその効果

KDC-G健康保険組合では、今期より適用・給付業務を電子申請に移行し、基幹業務の効率化を実現しています。健保組合が抱えていた課題、電子申請に踏み切った経緯、導入により実感している効果などを、常務理事の山田さんよりご紹介いただきました。

3年前の現場は、まさに「昭和の仕事」
山田さんが健保組合業務に携わり始めたのは約3年前。もちろんシステムも未導入で、書類に溺れ、処理に追われ、不備だらけの書類を延々差し戻すばかり。さらに、システムが苦手と感じているメンバーもいて仕事のやり方を変える雰囲気がなく、これは昭和の仕事なのか?と感じたそうです。

健康保険組合を取り巻く課題
山田さんは、健保には主に2つの課題があると考えました。
①納付金・医療費の増加により、保険料が不足している
②非効率な事務作業

①の改善に向け、各種がん検診や予防接種、特定保健指導、重症化予防セミナー等、さまざまな対策を行いました。また、システムによる扶養者の正しい把握により、納付金の過払いを抑えることができました。

②については、健保申請書類のシステム化を行い、業務改善を試みました。導入前後で、以下のようにワークフローが変化しました。

電子申請システム導入前後のフローの変化

当初、「システムが苦手」「システム化しても、その次に何をすればよいかわからない」など、変化への抵抗が強かった現場メンバーもいましたが、実際に導入してみると以下のような効果が表れ、各自がメリットを感じることができました。

そして、本来の取り組むべき保険事業へ業務をシフトできるようになったということです。

KDC-G健保の実例紹介のあとは、質疑応答タイムもあり、受講者様からはマイナンバーとの紐づけや情報セキュリティーの担保など、色々な質問が寄せられました。

電子申請・承認システム デモンストレーション

次に、KDC-G健康保険組合が導入した新システムについて、実際の画面を用いたデモンストレーションが実施されました。申請・承認の手順に従い、入力ミスや問い合わせを低減するための工夫などのご紹介もありました。

申請者画面
事業主記入画面では、差戻し理由の入力も可能

なお、KDC-Gではこのワークフローシステムを導入し、申請書1枚当たりにかかる時間が以下のように削減されました。

・申請者の起票と組合担当者の処理時間:平均67分から30分へ(約55%削減)
・申請者の問合せと組合担当者の対応時間:平均33分から14分へ(約58%削減)
・申請後、承認されるまでの時間:平均3日から1.2日へ(約59%削減)

手書き文字認識 AI-OCR「DX Suite」の紹介

健保組合さまの中には、紙ベースの申請書フォームを使っていてすぐにはペーパーレス化が難しい場合や、パンチ入力を外部委託されている健保組合もおありだと思います。そこで、急成長するOCR市場でトップシェアを誇るAI Inside 社さまより、手書き文字のOCR(文字を読み取り、テキストデータへ変換する)システム、AI-OCR「DX Suite」のご紹介とデモンストレーションを実施いただきました。

以前は「日本語は活字の読み取りも難しい」と言われたOCRですが、AIの学習機能を備え、今や手書き文字も高精度で認識できるとのこと。DX Suiteはクラウドサービスのため、これまでのクライアントの膨大な変換結果からAIが学習し、以下のような判別が難しそうな手書き処理でも正しく認識するそうです。

「手書きの紙帳票は、スキャンしても中身を手入力しなければならない」という悩みから解放され、電子化やデータの一括管理をさらに効率化することができるOCRシステム。健保に限らず、このような仕組みを必要とされるお客様は多いのではないでしょうか。

最後に

KDC-G健保組合の山田さんは、健康保険組合が効率を追求する理由は「健保の本来の目的である『保険事業の推進による、医療費の削減』を実現すること」だとおっしゃっていました。
システム投資により時間を創造したら、保険事業の結果を出すために、より具体的な取り組みを行うことに業務をシフトする必要があるとのこと。そしてその成果が企業の健康スコアや医療費の削減額などの数値で見えることで、組合業務に従事するメンバーの評価向上ややりがいにもつながるというお話には、とても納得させられました。

健保業務のIT化やECMにご興味がございましたら、ぜひ京セラドキュメントソリューションズホームページよりお問い合わせください。