【イベントレポート】サブスクリプションビジネスの概要と事例 ‐これから始めるサブスクのつくり方と話題の〇〇放題‐(2019年11月26日開催)

会場:Knowledge Place(ナレッジプラス)
開催日時:2019年11月26 日(火) 19:00~21:00
登壇者:
株式会社ストアフロント 代表取締役社長 岡田 英明 氏
イジゲン株式会社 代表取締役CEO 鶴岡 英明 氏

モノよりも体験を追い求めるこれからのビジネスモデル、定額・会員制のサブスクリプションとは?

2019年11月26日、Knowledge Placeでセミナーイベント「サブスクリプションビジネスの概要と事例 —これから始めるサブスクのつくり方と話題の〇〇放題—」が開催されました。登壇者は、株式会社ストアフロント代表取締役社長の岡田英明さん、イジゲン株式会社代表取締役CEOの鶴岡英明さんです。「サブスクリプション」とは、モノを買い取るのではなく、製品やサービスなどの一定期間の利用に対して代金を支払うビジネスモデルのことです。今回のイベントでは、実際にサブスクリプションプラットフォーム事業を行っているふたりが、サブスクリプションビジネスが広がった背景や、これからの可能性について語りました。

サブスクリプションで不可欠な、煩雑な作業をなくす

最初に登壇したのは、株式会社ストアフロントの岡田さん。まずはサブスクリプションビジネスのメリットを、事業者側と利用ユーザー側の2つの視点から説明しました。

岡田さんによれば、事業者側にとってのメリットは収支計画が立てやすいこと、利用ユーザー側にとっては通常料金よりも安く利用できる点だとのこと。アメリカでは、サブスクリプションビジネスを取り入れた企業の成長が、他の企業よりも早いという現象が生まれているほか、市場規模が2018年の5600億円から2023年には8000億円と、大幅に拡大することが見込まれていると話しました。

しかし、サブスクリプションビジネスには3つの課題があるとも。

1つ目は、売上・請求・顧客に関するデータを管理することに時間が割かれてしまうこと。主にエクセル機能を使用する手作業になってしまうため、煩雑な業務が増え、事業を拡大すればするほど、人員やリソースがそこに割かれてしまうことを指摘しました。

2つ目は、システム開発の難易度が高く、緻密な設計を求められること。

そして3つ目は、これら2つの課題が要因となり、サービス開発や品質向上のために労力やリソースを振り向けられないことだと話しました。

株式会社ストアフロントは、これらの課題を解消し、売上・顧客の管理、ユーザーの解約率の集計などを自動で行う「サブスクランプ」を提供していると岡田さん。煩雑な手作業を省くことで、サブスクリプションビジネス参入のハードルが下がると話しました。「サブスクリプションビジネスを始めたいが方法が分からない、もしくは初めてみたものの会員の獲得がうまくいかない、といった方の力になれればと思っています」。

さまざまなサブスクリプション事業を展開

続いて登壇したのは、イジゲン株式会社の鶴岡さん。同社のサブスクリプションを通じた事業展開として、3つの分野を紹介しました。

1つ目は、「プライベートブランド」。飲食店を中心に、ランチとドリンクのオリジナル定額サービスを提供しているのがそれに当たります。このサービスの利用ユーザーは、「その都度ランチ代を支払うよりも、定額のほうが安くすむ」とポジティブに受け止めているとのこと。店舗側にとっても、1店舗あたり月400名の来店客を獲得できているほか、メディア等で情報を掲載するよりも低コストで集客できるところがメリットだと話しました。また、店舗をユーザーデータ取得のための拠点にできることなども挙げました。

鶴岡さんは、「今は飲食をメインにしているが、今後はアパレルや美容などの生活に関連するものを一体化していきたいと考えています。例えば、月額10万円の定額で生活のすべてをまかなえる、というような世界観を作りたいです」と展望を語りました。

2つ目は「プラットフォーム」。ジャンルを絞らず、サブスクリプションでモノやコトを提供している店舗を集め、ショッピングサイトを運営する事業がそれに当たります。「現在、450社500プランほど掲載している」と鶴岡さん。ユニークな商品が多くあるところが魅力だと語りました。

3つ目は「B2B決済」。サブスクリプションを行っている法人向けの決済事業で、複雑になりがちな売上回収処理や契約管理をWeb上で完結させることで、企業の作業を省くことができると話しました。

鶴岡さんは、サブスクリプションビジネスを成功させるコツついて、「自社だけで行わない方がいい。初期段階では、データから判断できないことも多いため、段階を踏むことが必要」とコメント。ランチ・ドリンクサービスのようなプライベートブランド事業を利用し、ユーザーの動向や属性をデータ分析してから、独自のサブスクリプション事業を進める方がよいとアドバイスしました。

また、「分析したデータを保有しておくことが大事」と強調。ランチを食べられる時間を無制限から30分に限定した場合、ユーザーは何%減少したかなどのデータを残すことが、サブスクリプション成功を後押しすると語りました。

サブスクリプションを成功させるコツ

最後は、岡田さんと鶴岡さんによるトークセッションが行われました。参加者による質問に答えながら、サブスクリプションビジネスの理解を深める時間となりました。

まず「サブスクリプションが成功しやすい商品はあるか」という質問に対して、鶴岡さんは「原価が安いものや、コワーキングスペースなどの原価が変わらないものは扱いやすいが、そうでないものはユーザーのデータを活用することが重要」と回答。一方で岡田さんは、スキルを学ぶ教室サービスでの活用を提案。「サブスクリプションによって、月謝の支払い作業をなくすとユーザーにとって便利だ」と話しました。

「東京と地方、あるいは上場企業とスタートアップ企業とでは、サブスクリプションのプラットフォームの設計方法に違いはあるか」という質問に対しては、「地方の場合、コンパクトな範囲でターゲットを絞ってデータを得ることができるから設計しやすい」と鶴岡さん。岡田さんは、「関東はフリーランスで働いている人やインフルエンサーが多いので、サブスクリプションへの感度が高いと思うが、絞り込みが難しそうだ」と答えました。

イジゲン株式会社が展開する「定額ランチサービス always LUNCH」については、会場から「どうしてランチに着目したのか」という質問が。これに対し、鶴岡さんは、「これからはリアルの世界でのサブスクリプションビジネスがさらに醸成されていきます。日常で誰しもが利用するものをタッチポイントとしたかったことが1つ目の理由。もう1つは、店舗側の需要を感じたことです」と答えました。


「モノ」よりも「コト」や「体験」に目を向け始めている現代の消費者。その需要を満たすためのサブスクリプションは、これからの消費社会に新たな局面を与えるかもしれません。